県立図書館から江津湖へ。文学散歩に出かけてみませんか。

コラム

熊本市東区にある江津湖。「水前寺江津湖公園」として整備されており、市民の憩いの場となっています。

美しい水と豊かな自然が残っており、カワセミや蛍に出会える場所としても知られています。

一方で、自然に触れ合うだけが江津湖の楽しみではありません。
熊本県立図書館から上江津湖に向かう加勢川沿いには、文学に関する記念碑・句碑がたくさんあるんです。

今回は記念碑1つ、句碑3つを訪ねる散策コースをご紹介します。

文学好きならきっと楽しめますよ!

スタート地点は熊本県立図書館。隣接して「くまもと文学・歴史館」があるので、合わせて訪ねても良いですね。

図書館を正面に見て、左側にのびる遊歩道へ向かいましょう。

内藤濯(ないとうあろう)

まずはサン・テグジュペリの名作「星の王子さま」の翻訳などで知られる内藤濯の記念碑です。

内藤濯は1883(明治16)年に熊本市で生まれ、慶徳小学校の出身です。(中学からは福岡に転居し、のちに上京します。)
県立図書館の建物の脇に記念碑が立てられています。

サン・テグジュペリの没後60周年を記念するとともに内藤濯の功績をたたえて作られたもので、石碑には「星の王子さま」の一節が書かれています。

内藤濯の記念碑を見たら、加勢川方面へ向かって降りていきましょう。

高浜虚子(たかはまきょし)

右手に加勢川をのぞむ遊歩道を進みます。透明度が高く、美しい水が流れています。

左手に句碑が見えてきました。辺りは芭蕉園になっており、たくさんの芭蕉が並んでいます。

高浜虚子は1874(明治7)年、愛媛県生まれの俳人であり作家です。正岡子規に師事し、夏目漱石とも親交がありました。

句碑には芭蕉にちなんだ俳句が書かれています。

句碑「縦横に 水の流れや 芭蕉林」

その後は再び加勢川沿いを散策しましょう。次の目的地、夏目漱石と中村汀女の句碑のあるエリアまではゆっくり歩いても徒歩2、3分ほどの距離です。

夏目漱石(なつめそうせき)

続いては夏目漱石の句碑です。少しだけ高台になっている場所に立っています。

顔写真も入っているので見つけやすいでしょう。

夏目漱石が旧制第五高等学校(現在の熊本大学)の英語教師として熊本へやって来たのは1896(明治29)年のこと。その後4年3ヶ月に渡って熊本で暮らしました。
「草枕」や「二百十日」など熊本での体験をもとに書かれた作品も多く、また熊本時代に多くの俳句を読んだと言われています。

句碑「ふるい寄せて 白魚崩れん 許(ばかり)なり」

中村汀女(なかむらていじょ)

最後は昭和を代表する女流俳人である中村汀女の句碑です。漱石の句碑のほど近くに立っています。

中村汀女1900(明治33)年、熊本県飽託郡画図村(現在の熊本市東区江津)で生まれなので、江津湖周辺は地元ということになりますね。
熊本県立高等女学校(現在の熊本県立第一高等学校)を卒業したのち、「ホトトギス」同人となり活躍しました。

句碑「とどまれば あたりにふゆる 蜻蛉(とんぼ)かな」

文学散歩、出かけてみませんか

ご紹介したコースは、写真を撮ったり、木や花・水鳥などを眺めたりしながらゆっくり歩いても30分ほどで回れます。

それほど険しい道ではありませんが、階段や坂があるため、歩きやすい服装がおすすめです。また、句碑の周りなどは舗装されていない箇所もあります。雨上がりなどは足元に注意して進みましょう。

ちょっとした散策ルートを歩いただけでも、熊本にゆかりのある文学者が多いことに感心します。図書館を起点にした気軽な文学散歩、楽しんでみませんか。

メルマガ登録でCRASの住宅雑誌をゲット!