小さな旅:八代市「キャバレーニュー白馬」

特集

今回の、小さな旅の舞台は八代市。

いつまでも昭和のままであるような、伝説の「キャバレーニュー白馬」です。

1970年代生まれの筆者は、キャバレーに行ったことがありません。未知の世界です。
「ロンドン、ロンドン、愉快なロンドン楽しいロンドン♪」という「キャバレーロンドン」のテレビCMを覚えているだけ。

一体どんなところなのか、今や日本で唯一とも言われるキャバレーを訪ねてみました。

「キャバレー」とは

「キャバレー」はステージや生バンドの演奏付きのダンススペースを備え、ホステスさんの接客がある飲食店。

風俗営業法では1号営業に該当し、店舗面積が66平米以上・うち5分の1以上がダンスフロアであることなどが定められています。

始まりは第二次大戦後、進駐軍向けに東京・銀座に作られたもの。その後全国へ広がります。

1960〜70年代ごろに最盛期を迎え、大きな街には必ずあったものでした。

その後ディスコやキャバクラなどにシェアを奪われたキャバレーは、徐々にその姿を消していきます。

2018年には東京・銀座の老舗「白いばら」も閉店。今では八代市の「キャバレーニュー白馬」が日本でたったひとつ残るキャバレーと言われています。

八代に「キャバレーニュー白馬」あり。

昭和の頃、九州屈指の工業都市として華やいでいた八代市。
昭和30〜40年代は藺草(イグサ)の産地として、農家の景気も良い時代でした。日奈久温泉が最も賑わっていたのもこの頃です。

「キャバレーニュー白馬」は1958年の創業。八代市中心部にあるアーケード街のほど近くに佇んでいます。

白い壁面に踊る「WHITE HORSE」のロゴと、屋根の上にもレトロなネオンサインが掲げられています。

デビュー前の八代亜紀さんがステージに立って歌ったことでも知られています。

今回お話をうかがったのは、先代の甥っ子として店を受け継いだ2代目・池田社長。

御歳94才の大ママもご健在で、働きやすさから20年ほど続けているベテランホステスさんも在籍しているのだとか。

タイムスリップしたような店内

中に足を踏み入れると、そこは昭和の時代そのもの。想像以上に広く、きらびやかな空間です。

中央奥にはバンドセットのあるステージ、その正面にはダンスホールがあります。

天井には大きなシャンデリアにミラーボールがキラキラと回っています。

堅苦しいドレスコードはありませんが、大人のおしゃれを楽しんでこその雰囲気かもしれません。
仕立ての良いジャケット、よそ行きのワンピースを着ていきたくなるような空間です。

客席のソファはビロードの模様を金糸、銀糸で織り出した金華山織。国会中継で閣僚が腰をかけているソファと同じタイプの織りです。カバーには「WHITE HORSE」というオリジナルの刺繍も入っていました。

キャバレーは、さまざまな楽しみ方ができる場所です。

ホステスさんが作ってくれる水割りを飲む、生バンドの演奏を楽しむ。音楽を楽しみながら踊る。プロの歌を聞くのも良いし、時には自分が歌っても良いのです。

訪れる人数によっても変わりますが、80分で5,000円という料金設定は、予想よりもリーズナブル。

R60世代には懐古的な、若い世代には新鮮な場所として楽しめそうです。

この道50年、キャバレーを知り尽くした池田社長

ジャケットをビシッと着こなす、ダンディな池田社長。大学を出て、このキャバレーニュー白馬の後継者になるために就職したのは1972年のことでした。

それまでも長期休暇中などは、おじにあたる初代が経営する白馬を手伝ってきました。給料よりもお客様からの「おひねり」の方が高額だったという時代から、日本にたった一つのキャバレーと言われる現在まで、50年ほどのキャリアになります。

時代が移り変わっても、白馬は特別な場所。賑やかで楽しい時間を過ごすことなのか、ゆったりと静かな癒しなのか。お客様が何を求めているのかを感じ取って、求められるものを提供しなさい、とスタッフたちにいつも話しているとのことでした。

現役であることの凄み

今回の取材を通じて何よりも胸に響いたのは、この「白馬」が、今でも現役のキャバレーであるという点。

武家屋敷や古民家、レンガ造りの洋館などの歴史的な建物をそのまま使い続けるのは苦労も多いもの。雰囲気を生かして資料館やレストラン、カフェとして活用されることも多くなりました。

キャバレー白馬はすでに歴史的な価値がある建物ですが、本来の用途のまま、令和の時代にも使われ続けています。

池田社長やスタッフの努力はもちろん、地元からの支持や全国各地のファンの存在などにより、キャバレー白馬は残り続けています。今では日本に唯一無二の存在です。

文化財級のこの建物を維持するのは、相当に大変なご苦労があることでしょう。

「昔あったよね」ではなく、「今もそこにある」こと。

昭和の時代、高度経済成長の匂い、八代という街の歴史。建築物としてだけではなく、今なお息づく文化がそこにあるのです。

懐かしさだけではなく、現在も生き続けるキャバレーニュー白馬。小さな旅に、出かけてみませんか。

【キャバレー ニュー白馬】

所在地:熊本県八代市本町1丁目13−9

営業時間:20:00〜24:00

定休日:日曜日、月曜日

電話:0965–33–3211

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