R60歳時記:重陽の節句(ちょうようのせっく)

コラム

9月9日は重陽の節句(ちょうようのせっく)です。菊の節句とも呼ばれています。

現代の私たちにとっては、親しみ深い桃の節句や端午の節句に比べて少し影が薄い存在ですが、古くはとても重要な節句とされていたと言われています。

忘れられがちな重陽の節句について、おさらいしてみましょう。

重陽の節句とは

桃の節句は3月3日、端午の節句は5月5日。そして菊の節句である「重陽の節句」は9月9日です。
節句が奇数のゾロ目の日にあたるのは、古代中国の考え方によるもの。

奇数は縁起の良い「陽」、偶数は「陰」であるとされており、3月3日など陽数が重なる日はめでたい日であると考えられてきました。

最も大きな陽数である「9」のゾロ目である9月9日は、「陽が重なる」ということで「重陽の節句」と定められました。

邪気をはらう菊の花

重陽の節句が中国から日本に伝わったのは平安時代初期のこと。
宮中の行事として取り入れられ、重陽の節会(せちえ)と呼ばれる宴が行われるようになりました。天皇が主催する宴は大規模なもので、文人たちが漢詩や和歌を詠むなどして菊の花を愛でたと言われています。

旧暦の9月9日は現在の暦でいう10月半ばごろですから、まさに菊の花が盛りを迎える時期ですね。

また菊は長寿の象徴であるとともに邪気をはらう花であるとされ、菊の香りを移した「菊酒」を飲んで無行息災や長寿を願ったとも言われています。

行事食は「菊酒」と「栗ご飯」

さらに時代が下って江戸時代になると、諸大名が江戸城に集まって重陽の節句を祝うようになります。「五節句」の締めくくりにあたる大切な行事とされました。

宮中の慣習にならって菊酒を飲み、見事な菊の花を並べて愛でるほか、旬の味覚である栗ご飯を食すようになったと言われています。

その後、庶民の間にも栗ご飯を食べる習慣が広まりました。人々は広く秋の収穫シーズンを祝い、旬の味覚を楽しんだことでしょう。

この菊酒と栗ご飯は、重陽の節句の行事食として現代まで受け継がれています。

現代の私たちが取り入れるなら…

手軽に重陽の節句の行事食を取り入れるなら、まずは栗ご飯です。
熊本は全国有数の栗の産地ですから、地元産のおいしい栗を使って栗ご飯を炊きましょう。

菊酒を楽しむなら、食用菊の花びらを散らした酒器に冷酒を注ぐのが最も手軽な方法です。

また、菊湯と言って菊の花を浮かべた湯船につかる風習もあります。乾燥させた花びらが売られているほか、自宅で気軽に試してみるなら生花を使ってみるのも良いでしょう。

市販品であれば、母菊とも呼ばれるカミツレ(カモミール)を使った入浴剤やバスソルトもおすすめです。カミツレはキク科の植物でハーブの女王とも言われ、幅広い効能が知られています。

お部屋に菊の花を飾り、菊湯につかって夏の疲れを癒す。菊酒や栗ご飯をいただく。

どれも手軽に出来そうですよね。

穏やかな秋の訪れと収穫を祝い、家族の健康を祈る日として重陽の節句を取り入れてみてはいかがでしょうか。

メルマガ登録でCRASの住宅雑誌をゲット!