R 60歳時記:半夏生(はんげしょう)

コラム

このコラムでは、これまでにも季節の変わり目をあらわす「雑節」をご紹介してきました。
今回のテーマはそんな雑節のひとつである「半夏生(はんげしょう)」。

古来「夏至から数えて11日目」とされていましたが、現在では「天球上の黄経100度の点を太陽が通過する日」とされ、太陽暦では例年7月2日ごろにあたります。

2020年の半夏生は、7月1日(水)です。

田植えを終える目安

雑節は古くから農耕民族であった日本人の暮らしに密接しており、農作業における目安になっていることが多いもの。
半夏生もそのひとつで、稲作における大切な節目です。

古来「半夏生の前に田植えを終わらせる」ものとされ、田植えが半夏生を過ぎてしまうと秋の収穫が減ると言われてきました。

また、稲作以外でも農作業の目安になっているケースもあります。

長野県の佐久地方では「はんげにんじん」と言う言葉があり、半夏生はにんじんを植えるのに良い時期とされています。

農作業を終え、体を休めるための日

この日までに田植えを終える目安、とされる半夏生。

中には、半夏生から5日間は休みと決めている地域もあります。暑くなる時期でもあり、田植えなどで疲れた体を休めるための先人の知恵があったのかもしれません。

地域によっては、この時期に関するさまざまな言い伝えも残っています。
三重県の沿岸部や熊野などの一部の地域では、半夏生には「ハンゲ」という妖怪が徘徊するから出歩いてはいけないと言われています。

これも早めに農作業を済ませ、家でゆっくりと休息をとるために始まった言い伝えなのかもしれません。

植物の「ハンゲショウ」

「ハンゲショウ」といえば、この写真のような植物を思い浮かべた人もいるかもしれません。
ハンゲショウは「カタシログサ」とも呼ばれるドクダミ科の植物です。

名前の由来には諸説ありますが、

・半夏生の頃に花を咲かせることから「ハンゲショウ」と呼ばれるようになった
・葉が半分ほど白くなるため、半分だけ化粧をしているように見えるため「ハンゲショウ」と呼ばれるようになった

とする二つの説が有力です。

自生するハンゲショウは近年では減少傾向にあり、東京都など絶滅危惧種に指定されている自治体も。

熊本県では「準絶滅危惧種」になっています。見かけても無闇に折って持ち帰ったりせず、大切に鑑賞しましょう。

大雨には要注意

この頃に降る雨は「半夏雨(はんげあめ)」あるいは「半夏水(はんげみず)」と呼ばれ、大雨になることが多いと言われています。
熊本県を含む九州北部でも7月初旬は梅雨の後半にあたります。かなり激しい雨が降り、警報が出されることがありますね。

記憶に新しいところでは、福岡県や大分県を中心に大きな被害があった平成29年の「九州北部豪雨」は7月5日から6日に降った大雨でした。

雨は天からの恵みとは言え、半夏生の時期の豪雨には注意したいものです。

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