R60歳時記:二百十日(にひゃくとおか)

コラム

今回のR60歳時記は雑節のひとつである「二百十日( にひゃくとおか)」

立春から数えて210日目を指し、通常では9月1日ごろにあたります。2020年は閏年のため1日早まり、8月31日が二百十日になります。

二百十日とは

台風や嵐が来たり、風が強くなったりすると言われる二百十日。雑節として暦に記載されるようになったのは、江戸時代以降のことです。

強風に悩まされる「農家の厄日」などと言われるのを聞いたことがある人も多いかもしれません。

実際には、9月1日が特に台風が多いという統計上の裏付けはありません。
ただし、9月1日前後はちょうど稲が開花する時期にあたります。台風が来ると大切な農作物に大きな被害が出てしまうため、農家にとっては注意が必要な日であると考えられています。

全国各地で、二百十日の前後には、風を鎮めるための祭りである「風祭り(かざまつり)」が行われてきました。

有名なものでは富山市で行われる越中八尾「おわら風の盆」などがあります。毎年9月1日から三日間に渡って開催され、全国から見物客が訪れる祭りです。(残念ながら、2020年のおわら風の盆は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止になりました。)

また、稲作だけでなく漁業の関係者にとっても、台風は気になる災害です。

伊勢の船乗りたちは、長年の経験からこの日を凶日としていたと言われています。9月以降は本格的な台風シーズンに入りますから、様々な備えをする始めの日にもなりそうですね。

夏目漱石の小説「二百十日」

二百十日と言えば、夏目漱石の小説のタイトルとしても知られていますね。

この小説は、漱石が五高(現在の熊本大学)の英語教師として熊本へ赴任していた時の実体験をもとにしていると言われています。

舞台は阿蘇。主人公たちが阿蘇の火口を見ようと登山に出かけたものの「二百十日」の嵐に遭遇し、道に迷ってしまい登れないまま引き返す、というくだりがあります。

二百十日が、嵐が起きる代名詞のように描かれているのが興味深いところです。

ちなみにこの物語の主人公たちは、温泉宿に泊まってビールを飲み、阿蘇神社へお参りをして登山に行っています。現代の私たちでもそのまま同じコースをたどれそうですね。

9月1日は「防災の日」

二百十日が必ずしも台風が多いとは限りませんが、9月1日は「防災の日」でもあります。

この日が防災の日と定められたのは、1923(大正12)年の9月1日に関東大震災が起きたため。

嵐や台風だけでなく地震や豪雨、火山の噴火など色々な災害が起きるものです。2016年4月の熊本地震から4年以上が過ぎましたが、今年の7月には「令和2年7月豪雨」があり、熊本県南部を中心に大変な被害となりました。いつどこでどのような災害が起きるのかは、誰にも分かりません。

残念ながら天災を完全に防ぐことはできませんが、備えることは可能です。

防災の日をきっかけに、自宅にある備蓄品を見直したり、近くの避難所を確認したりしておきましょう。家族間での連絡手段や集合場所などについて話し合っておくのも良いですね。

二百十日は嵐が多い、防災の日。そんな意識を持って、災害に備える日にしてみませんか。

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