新型コロナウイルス感染症が出てからというもの、日々の暮らしは大きく変わりました。
2020年4月に全国を対象とした緊急事態宣言が出されて以降、さまざまな外出の自粛やテレワークの推進などがなされても、収束までにはもうしばらく時間がかかりそうです。
これといった特効薬やワクチンがない以上、外出の自粛やマスク、手洗いなどで地道に予防するしかありません。
先が見えず困った時には、神さま仏さまにも祈りたくなるのが人のサガというもの。
心を落ち着かせるためにも、寺社仏閣をたずねて静かにお参りしたくなる人も多いでしょう。
古くから、日本では病気平癒を願ってさまざまな信仰がありました。
疫病退散=アマビエ?!
新型コロナウイルスの収束はみんなの願いです。地道な予防策のほか、ゲン担ぎをしたり神仏へ祈ったりする人も増えてきました。
最近注目されている半人半魚の妖怪「アマビエ」(一説にはアマビコ)もそのひとつ。
アマビエは江戸時代後期、肥後国の海中に1度だけ現れたとされる不思議な妖怪。アマビエの絵を持つと流行り病を除けられると言われています。
ややマニアックな存在だったものの新型コロナウイルス感染症の流行とともにSNSなどで話題になり、一躍有名になりました。独特の風貌も何だかかわいらしく、アマビエをモチーフにした和菓子やグッズなども全国で作られています。
病気平癒を願って信仰された薬師如来
一方でアマビエ以上に古くから知られ、病を癒やすために信仰されてきたのが薬師如来(やくしにょらい)です。
その名のとおり、手には薬壺(やっこ)を持っていることも多く、古くから病や体の不調に悩む多くの人に信仰されてきました。
奈良、西ノ京にある「薬師寺」も有名です。ご本尊は薬師如来を中心とする薬師三尊像。国宝に指定されています。
寺の創建は7世紀の終わり頃と古く、天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の病気平癒を願って建立されました。
1300年以上の時が流れても、そして身分の違いがあっても、すこやかでありたい、愛する人に健康でいてほしいという人々の願いは変わらないものですね。
街かどの薬師如来
薬師如来像が安置されている寺院は全国各地にあります。
一方で、ちょっとした路地などに薬師如来の御堂が建てられているケースも。地蔵菩薩や馬頭観音に比べると数は少ないものの、熊本にも見られます。
こちらは熊本市中央区本庄5丁目のとある路地。住宅街の一角に、薬師如来の御堂が建っています。
中には小さな薬師如来立像が安置されています。
御堂の天井画も美しく、木のぬくもりがありながらも荘厳な雰囲気。内外のそうじも行き届いており、近隣に住む人たちの手で大切に守られているようです。
薬師寺など、薬師如来を御本尊とする有名な寺院を訪ねて見たいと思っても、遠くまで出かけるのはもう少し先になりそうな今。
散歩の途中、身近なところに薬師如来像を見つけたら、静かに疫病退散を祈ってみたいものですね。