「小さな旅」としてお届けしている北海道の旅。今回は「JR宗谷本線」についてご紹介しましょう。
次に同じ土地を旅する時には、もうなくなっているかもしれない駅や線路を訪ねます。
JR北海道「宗谷本線」とは
広大な営業範囲を持つJR北海道。旭川から稚内までのおよそ260キロメートルを結ぶ路線が「宗谷本線」です。
旭川や稚内はそれなりの人口を持つ都市ですが、間の地域はそうではありません。人家はまばらで広大な農地が続くばかりの地域、また中には原野とでもいうべき地域もあります。
また、冬は寒さが厳しいだけでなく、積雪の多いエリアも含まれます。
そのため、ほとんど利用されていない無人駅も多い路線です。(もっとも、JR北海道には他にもそういった駅、そういった路線はたくさんありますね。)
そんな宗谷本線ですが、JR北海道と各自治体の協議により、2021年3月に13駅もの駅が廃止されることが決定しました。
廃止が発表された駅一覧
来春で廃止されるのは次の13駅です。
南比布駅
北比布駅
東六線駅
北剣淵駅
下士別駅
北星駅
南美深駅
紋穂内駅
恩根内駅
豊清水駅
安牛駅
上幌延駅
抜海駅
駅がなくなっていくのは寂しく感じますが、JR北海道が宗谷線で駅の廃止を検討した基準は「過去5年間の1日当たりの乗車人員が3人以下の無人駅」だと言います。
国鉄時代ならばともかく、一企業としてそういった駅を存続させていくのは簡単ではないのでしょう。
一方では、利用者は少なくても観光スポットとして有用であるために廃止しない駅もあります。
有名なところでは、和寒町にある「塩狩駅」。三浦綾子の小説「塩狩峠」の舞台として知られ、貴重な観光資源であるため存続が決まりました。
こういった駅では、各自治体が維持費の一部を負担するなどして駅を存続させていくのです。
宗谷本線の駅を歩く
こちらは特急の停車駅である「名寄駅」です。
宗谷本線で電化が進んでいるのは旭川駅とその隣2駅(旭川四条・新旭川)を含めた3駅のみです。
その先は終点である稚内まで全て非電化区域。ここでは今なお昔懐かしい「汽車」が走っているのです。
熊本県内を含むJR九州の電化率は6割ほどですが、JR北海道ではせいぜい2割強。昭和を思わせる鉄道の旅を楽しめます。
2021年3月までに宗谷本線に乗る旅ができるなら、廃止される駅にぜひ降りてみましょう。
写真は美深町内にある「紋穂内駅」。各駅停車のみが止まる駅で、こじんまりした待合室だけがあります。
周囲には民家が少しだけありますが、1日の平均乗降客数は5人に満たないほどであると言われています。
まっすぐに伸びる宗谷本線の線路と、たった1両の各駅停車が停まる小さな無人駅。旅情をそそりますね。
この紋穂内駅も、あと半年足らずで廃止になります。
地方のJRやローカル鉄道は、駅どころか路線ごと廃止されてしまう可能性をはらんでいます。
旅先で出会う美しい鉄道の風景は、まさに一期一会かもしれません。
北海道を旅する時には、名だたる観光地だけでなく、いつしかなくなっていく小さな駅を訪ねてみるのもおすすめですよ。