今回の「小さな旅」の舞台は、再びの長崎。
崇福寺に続き、旅慣れたリピーターにおすすめしたい寺社仏閣をご紹介します。
今回は福山雅治さんの歌「クスノキ」の舞台としても知られる「山王神社」です。
筆者がこの地を訪ねたきっかけは、長崎出身の友人からの勧めでした。とても長崎らしい神社で、ぜひ行ってみてほしい、と。
山王神社とは
現在の山王(さんのう)神社は、明治元年(1868)創立の神社です。浦上皇大神宮、あるいは山王日吉神社とも称されます。
元々の歴史はさらに古く、寛永15(1638)年の山王権現の創立にまでさかのぼると伝えられています。
長崎の地に、原子爆弾が投下されたのは昭和20(1945)年8月9日。
爆心地からわずか800メートルほどの距離にあった山王神社は、凄まじい爆風と熱線にさらされました。そして未曾有の被害を受けた長崎の街は炎に包まれ、多くの犠牲者を出しました。
現在の穏やかな空気からは想像できないほどの惨劇が、この地に起きたのです。
山王神社の前を通る道は「旧浦上街道」と呼ばれます。
訪れた日には、地域猫が何匹が歩いていました。入り組んだ階段や坂の間を、のんびりと暮らす猫たち。
長崎らしい風景が連なります。
一本柱の鳥居
階段の先に見えているのは、山王神社を象徴する場所のひとつである「二の鳥居」。
原子爆弾の爆風によって半分が崩壊しており、「一本足の鳥居」としても知られています。
倒壊した部分も石畳の上に大切に保存されており、残された半分が今なお立ち続けるその姿は、人々の心を打ちます。
階段の下から見上げる鳥居は、青空を背景にした姿が印象的。InstagramなどのSNSでも注目されているスポットです。
被曝クスノキ
山王神社の大楠は、その歴史的背景から「被曝クスノキ」として知られています。
長崎県出身のシンガーソングライター・福山雅治さんの歌「クスノキ」は、この木のことを歌ったもの。
2014年に「クスノキ」が発表されて以降、歌の聖地として訪れるファンが全国から集まるようになりました。
2本の大楠は樹齢400〜500年程度。
爆風と熱風で幹や枝の一部を失いました。被曝により一時は枯れかかったものの、2年ほどで奇跡的に新芽が生まれ、少しずつ樹勢を盛り返しました。
現在でも静かに、かつ力強く立ち続けるその姿は、長崎の街と人々を見守っているかのようです。
美しく復興した長崎の街の、礎とも言える場所かもしれません。
山王神社は、長崎の人々にとって大切な場所。75年前の原爆の記憶を今に伝える、貴重な文化遺産でもあります。
散策して往時をしのび、心静かに世界の平和を祈ってみてはいかがでしょうか。
【山王神社】
所在地:長崎県長崎市坂本2丁目6−56
アクセス:JR「浦上」駅から徒歩10分、または路面電車「大学病院」電停より徒歩6分